新作開発

干支のマスコットは東北でも大人気。手芸屋さんの店頭には、2018年戌年にちなんだ犬のマスコット作成キットがずらりと並んでいます。

でも、鳥(2017年)や猿(2016年)、羊(2015年)に比べて、犬は難しい。手芸屋さんのキットでさえ、パーツが多い上に曲線に縫わなければならない所がほとんどで、初心者はちょっと尻込みしてしまいそう。しかもキットはそれなりに高価です。もっと手軽に簡単に犬のマスコットをつくることはできないか——。

10月末から手芸の教本を参考にしたり、岩手県の遠野市から沿岸部に手芸の支援を続けている先生や、陸前高田で手芸の達者なおらほアーティストの方々に相談したりしながら、犬のマスコットの新作づくりを進めています。

遠野の先生からは、軍手を片方だけ使った犬のマスコットの試作品を提案してもらいました。彼女は神戸生まれの「まけないぞう」を、岩手県沿岸部に伝えてくれた方です。

陸前高田のおらほアーティストは、手芸屋さんのキットを元に改良した作品をつくり始めています。

わたしたちは軍手を1双(一組)使った「わんこ」を試作。12月7日、お披露目も兼ねて岩手県岩泉町の滝の上仮設住宅で、わんこづくりのワークショップを開催しました。

岩泉町では、わんこ1体と、わんこからスピンアウトした「ホセ」という名の犬が、クラフト系セレクトショップのご主人に気に入ってもらって、お嫁に出るという嬉しい出来事もありましたが、ワークショップでは当のわんこの完成度がまだまだであることが明らかに。2時間ほどでつくれる予定が、3時間近くも掛かってしまったのです。その上、高齢の方にとって長時間の針仕事は、目が疲れるし、指先が利かなくなるしで大変だということが判明。

目指しているのは、とにかく手軽なこと。誰にでも簡単につくれること。そして、材料代が掛からないという点でも手軽であること。申年のソックモンキーや、酉年の軍手でつくった鶏のように広まって、マスコットづくりを通して、人と人のつながりが深まっていくことを願いつつ、改良に改良を重ねています。(2017年12月15日)

岩手県岩泉町の滝の上仮設住宅で開催した「わんこ」づくりワークショップの一コマ
岩手県岩泉町の滝の上仮設住宅で開催した「わんこ」づくりワークショップの一コマ。(滝の上仮設は、2016年の台風10号被害をうけた方々のために設置された仮設住宅です)

「わーそれ可愛い〜、作り方教えて〜」がはじめましての挨拶代わり。

「そこはね、こうやって…」「あ、そうか!」と手を動かしているうちに、あっという間に仲間になってしまいます。

手芸はつなぐ

Facebookで紹介した「おらほアート展2017」のワークショップ会場の写真を再アップします。写真の中では。なんだかみんな昔からの友だち同士のように見えますが、写っているのは陸前高田のお母さんたち、神戸のおかんたち、そして中学生、大学生、海外のボランティアたち。それぞれ初対面のグループです。


こっそり内情を明かしますと、実は中学生ボランティアは1日目の午前中だけの予定でしたが… 迎えに来たお母さんに当人たちがお願いして、午後も2日目も参加してくれたのでした。
海外ボランティアの人たちともしっかり仲良しになりました。
盛岡から来てくれた大学生たちは、帰りのバスの時間が恨めしそう。もっと近ければ良かったのに。
神戸のみなさんがお帰りの時には、陸前高田のお母さんたちと握手、握手、ハグ、ハグ、そしてプレゼント交換。みなさんの胸に輝くマスコットは仲間のしるしです。BRTの駅までお見送りして再会を約束しました。

あいさつもそこそこに、こんなに仲良くなってしまうなんて。手芸はつなぐのです、人と人を。

大好きな写真

神戸からの「おかんアーティスト」、おかん(お母さん)アートのアーティストが持ってきたのは、数10種類もの作品づくりができる手芸材料と裁縫セット。「いや〜、荷物が重たくてしんどかったわぁ」とこぼしながらも、その表情は花マルの笑顔。長かった道中、「陸前高田の人たちに会ったら何つくろうかな、あれがいいかな、こっちがいいかなとあれこれ考えてたら着いちゃった」のだそうです。

荷物を広げてしばらくすると、このとおり。トリがいて、松ぼっくりがあって、フェルトのハートがあって、仲良しカモメがいて、ヘキサゴントレイ(布製の六角形トレイ)があって。いろんな作品をたくさんつくったんですね。楽しかったことがストレートに伝わってきます。眼鏡が置いてあるところなんかリアルです。あ〜ちょっと一休みって感じでしょうか。

今度会った時は何をつくるのかな。どんな話をするのかな。次回のおらほアート展が楽しみです。